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外資系IRオペレーターの日本攻略

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カジノ、日本に迫るトランプ氏 「この企業知っているか」

カジノを中心とした統合型リゾート(IR)施設整備を巡り、外資の日本への攻勢が本格化している。とりわけ活発なのは米大手娯楽産業の動きで、トランプ米大統領を巻き込み門戸開放を迫る。自治体には海外への利益流出に反感もあるが、カジノを運営するにはノウハウが豊富な外資系企業に頼らざるを得ない。

 都内で5月10~11日に開いた国際カジノ会議「ジャパン・ゲーミング・コングレス」。米国、欧州、アジアのカジノ運営業者ら約500人が集まり、日本の自治体関係者らと活発に意見を交わした。マカオのカジノ大手銀河娯楽集団(ギャラクシー・エンターテインメント)の幹部は「マカオでは大衆市場を狙って成功した。日本でも地域社会との結びつきを重視したい」と秋波を送る。

■自治体に面会攻勢

一部の海外カジノ大手は日本のロビイストとも契約。すでにロビイストは政府や地方自治体の関係者に対する「面会攻勢」をかけている。

2016年12月にIR整備推進法(カジノ法)が成立。政府は秋の臨時国会にIRの運営方法などを定めた実施法案を提出する。実際の開業は20年の東京五輪後になりそうだが、自治体の助走は活発になってきた。

北海道釧路市の蝦名大也市長は「環境と共生できるIR施設を実現したい」と強調。和歌山県の仁坂吉伸知事も人工島「和歌山マリーナシティ」の活用を念頭に「富裕層を対象にしたリゾート施設を目指す」と話す。

パチンコなど多種多様な賭け事を受け入れる日本市場の潜在力に目をつけ、なりふり構わず「ガイアツ」をかけてきた筆頭格は米国だ。

「シンゾウ、こういった企業を知っているか」。米国で開いた2月の日米首脳会談。トランプ大統領は安倍晋三首相にほほ笑みかけた。日本が取り組むIRの整備推進方針を歓迎したうえで、米ラスベガス・サンズ、米MGMリゾーツなどの娯楽企業を列挙した。政府関係者によると首相は聞き置く姿勢だったが、隣の側近にすかさず企業名のメモを取らせた。

■娯楽企業トップが高額献金

サンズはアデルソン会長兼最高経営責任者(CEO)が熱心な共和党支持者で、トランプ氏個人への高額献金者でもある。MGMリゾーツなど米大手は複数の有力連邦議員に働きかけ情報収集に余念がない。カジノは地域住民に雇用の場を提供し、地元に多額の税収をもたらす有力なビジネスだ。

その超党派の政治力はオバマ政権時代から発揮されてきた。米は日本のIR法案の動向に常に探りを入れ、米企業進出の環境整備を度々日本に求めた。トランプ氏が首脳会談で首相に言及したのは、献金額が多い順だったようだ。

日本企業にはそもそもカジノ運営の実績がない。セガサミーホールディングスは日本展開を視野に、4月に韓国仁川市で韓国カジノ大手とIR運営に乗り出したばかり。京浜急行電鉄は羽田空港との相乗効果を狙って3年前から本格的に検討しているが、具体的な絵図面は描けていない。サンズ幹部はソフトバンクグループの孫正義社長とパイプがあるとされ、思わぬ企業が外資支援に回る可能性も出ている。

一方で自治体などには「利益を外資に持って行かれる」との反発があるのも事実だ。強硬な意見として、日本企業との合弁義務付けなど外資の活動に一定の枠をはめる案も与党内などにあった。だが内外無差別が原則の世界貿易機関(WTO)協定に抵触しかねず、現実味に乏しいという。

カジノ開設には営業や立地など各種許認可の取得や政府、地元自治体との膨大な調整が必要だ。落としどころとして政府が考えているのが利益の一部を自治体に還元し、地元の理解を得ることだ。運営会社がカジノの利益から一定額を国や自治体に納める納付金制を導入する計画だ。納付金は観光振興などに活用される。

米大手シーザーズ・エンターテインメントのブラックハースト副社長が東京・永田町にある与党議員の事務所を訪ねたのは5月。この議員が「日本の企業や自治体と信頼関係をつくらないとうまくできませんよ」と言うと、副社長は「そこはよく分かっています」とうなずいた。

未成年や反社会勢力の入場規制やマネーロンダリング(資金洗浄)対策なども具体化はこれから。入念な検討がいる課題はまだ、山積している。(辻隆史、重田俊介)

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO17367480W7A600C1SHA000/

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