今国会でのIR解禁が現実味を帯びてきた最中、千葉市でもIR誘致に向けて動き始めた。東京ディズニーリゾートとの相乗効果を狙って、地元企業を主体としたコンソーシアムを組んでIR開発権の獲得に乗り出す。この準備会社は、海外で実績のあるIR事業者と資本提携することでカジノ運営のノウハウを賄い、IR全体の運営は地元企業で進める方針だ。
今やIRはカジノ主体ではなく、ノンゲーミングが97%を占める巨大なリゾート観光ツールとしての「街づくり事業」として認知され始めている。日本のIRは、海外の模倣ではなく、日本独自のビジネスモデルと認可管理制度を構築して世界に例のないリゾートを実現してもらいたい。
ディズニーの地でカジノを、千葉の地元企業が誘致へ株式会社構想
解禁に向けて国会審議が進むカジノについて、千葉市周辺の中小企業の経営者らが地元資本で株式会社を設立する形でのIR(統合リゾート)施設誘致を目指している。
千葉市で医療関連の会社を経営する寒竹郁夫氏(60)ら地元企業の関係者約10人が昨年、1000万円を出資して準備会社を設立、成田空港や羽田空港に近い立地の良さや東京ディズニーリゾートとの相乗効果を強調して誘致活動を進めている。準備会社の社長を務める寒竹氏はブルームバーグとのインタビューで、地域活性化の観点から今後は地元企業や海外のカジノ運営会社から資金を募る株式会社方式に発展させ、地元資本が関わる形で運営を進めていきたいと話した。カジノを含むIR実施法案は先月22日、衆院本会議で審議入りした。全国3カ所を上限にカジノ施設の設置を認めることが柱で、政府・与党は今国会でのIR実施法案の成立を目指している。大阪や横浜など大都市部のほか徳島県鳴門市や静岡県熱海市、北海道苫小牧市などの地方都市でも誘致に向けた動きがあり、最終的な選定に向けて競争が激化しそうだ。大阪商業大学の三原融教授は、千葉市のライバルは東京や横浜市などだが実質的には「今はまだ誰も手を挙げていない」状況。IR法案が通れば自治体間の競争が始まり、先行して手を挙げた自治体に国民の機運は向かいやすいという。一方、IR誘致は行政主体でやるべき業務が多く、行政が前面に立ってリードしないと、民間団体が声を挙げても動きにくいともし、「行政の動きが見えてこないのが千葉市の難点だ」と話した。寒竹氏とカジノ誘致の準備会社を共同創業したデザイン会社経営の松本有氏は、グループとして千葉県知事と千葉市長にそれぞれIR推進の要望書を提出したほか、IRに関する勉強会を開くなどして地元議員らとも情報共有を行ってきたと話し、行政とも足並みをそろえて誘致を勝ち取りたい考えだ。千葉市でIR関連の業務を担当する幕張新都心課の中台英世氏は、法律の内容が確定していない現段階では市としてはIR誘致についての立場を出していないとし、「国の動向を注視しながら引き続き慎重に検討を進めていきたい」と述べる。仮にIR施設を受け入れた場合の立地については可能性調査が済んでいる幕張が想定されるとした。
元ゴールドマン・サックス証券のアナリストでIR情報サイト「カジノIRジャパン」を運営する小池隆由氏は千葉市について、「地元の草の根活動で誘致の機運が高まっている珍しい土地」だと指摘する。大型展示場「幕張メッセ」での成功体験や、埋め立てによる新しい土地であることから住民自らが街づくりに参加する雰囲気があるといい、「住民の反対が少ないと国も指定しやすい」と話した。
メガフロート
寒竹社長らの構想では、市内臨海部にある幕張メッセ周辺の土地にカジノやリゾート施設を整備。将来的には総面積53万4000平方メートル、建設費640億円で洋上にメガフロートを建設し、その上でも事業を展開する計画だ。大型客船が寄港できる船着き場も整備し、海外からの資産家を羽田空港から海路で幕張まで連れてくるという。
巨額の投資が必要になるが、海外運営会社など提携先の検討をはじめており、資金を広く外部から募ることで計画の実現は可能とみている。
東京への一極集中が進む一方で、千葉県では百貨店の三越千葉店や千葉パルコ(千葉市)、そごう柏店(柏市)など大型商業施設が相次いで閉店するなど暗いニュースが続いている。寒竹社長はカジノ誘致には地元を元気にする願いも込められているといい、「幕張は美しく、人も優しい素晴らしい土地。幕張を一緒に大事にしてくれるパートナーと今までにないIRを作っていく」と語った。
(Bloomberg)https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-05-31/P99KRU6S972901