大阪IRの理解に向け、大阪府民セミナーがスタート
カジノ統合型リゾート施設(IR)誘致 意義訴え…大阪府市が初のセミナー開催
大阪府と大阪市は20日、同市の人工島・夢洲(ゆめしま)への誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート施設(IR)について、初めてとなる府民向けセミナーを同市内で開催。参加した約100人の府民にIR誘致の意義などを訴え、理解を求めた。
有識者がギャンブル依存症対策などを話し合う府市の「IR推進会議」の座長、溝畑宏・大阪観光局長が「なぜ、IRが大阪に必要なのか?」と題して講演。府はIR誘致で年間6300億円の経済効果があると試算しており、「IRの目的は国際競争力の高い観光地の形成と地域経済の活性化だ。カジノ導入への懸念や課題をしっかり抑制していきたい」と語った。
府市は年度内にセミナーを10回以上開催し、秋以降には具体的な大阪のIR構想についても触れる予定。
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IRをめぐっては、事業者からの納付金や税収の増加、雇用創出などを期待する自治体が各地で誘致に名乗りを上げている。特に関西では大阪府市に加え、和歌山県と和歌山市が人工島「和歌山マリーナシティ」を、大阪府泉佐野市が産業用地「りんくうタウン」をPRするなど〝過密状態〟に。IRの設置区域の選定方法などを定めた「IR実施法案」が秋にも国会に提出されるのを前に、牽制する動きも出ている。
「IR事業者がどこで実施したいかが重要。大阪と和歌山の距離で2カ所は考えにくいのではないか」
10以上のIR事業者から訪問を受けている松井一郎大阪府知事は4月、和歌山県市をこう牽制しつつ、IR誘致に自信をみせた。
一方の仁坂吉伸和歌山県知事はこれまで、大阪への対抗意識はあらわにしていないが、6月の会見では今後、設置区域をめぐる争いになるとの見方を示した。
関西国際空港から車で約40分のマリーナシティは、温泉や黒潮市場などが多くの外国人観光客でにぎわう。こうした立地条件を踏まえ、カジノ施設を外国人専用とする方針を表明。懸念されるギャンブル依存症対策の一環で、いち早く独自色を打ち出している。
〝大阪府市VS.和歌山県市〟の構図に埋もれがちだが、「カジノ誘致の元祖」を自負するのが泉佐野市だ。平成14年から規制緩和によるカジノ設置を求めて活動を続けてきた。担当者は、関空の対岸という立地から「IR事業者から太鼓判を押された」と自信をみせる。地元の理解を広げるため、?年からは市民向けの勉強会も重ねてきた。
ただ、和歌山県市と泉佐野市は不安材料も抱える。
有識者でつくる国のIR推進会議では、国内を代表するような国際会議場やホテルといった施設の整備を求める方向で議論が進んでおり、同県の担当者は「地方には難しい」と指摘。「大都市偏重にならないように、計画内容で是非を判断してほしい」と訴える。
政府の方針によっては、申請主体が「都道府県」となる可能性もある。その場合、大阪市とタッグを組む大阪府が、りんくうタウンを設置場所として申請する見込みはなく、泉佐野市の担当者は「市独自で申請できるよう国に求めたい」と話している。
IRはほかに、長崎県佐世保市や北海道の釧路市、苫小牧市、留寿都村なども誘致活動を推進。横浜市も誘致が取り沙汰されたが、「まだ手を挙げるか判断する状況ではない」(担当者)として、国の動向を見守っている状況だ。
(元記事)http://www.sankei.com/west/news/170621/wst1706210026-n1.html