17日、今秋の臨時国会でのIR実施法案の審議入りを前に各地での説明公聴会がスタートしました。今後も全国8か所地域で説明公聴会が開催され、国民の意見を求めていく方針です。
カジノ構想熱帯びる
政府、法案提出へ説明会/自治体、観光の目玉づくり
カジノを中心とする統合型リゾート(IR)の実現に向けた準備が本格化してきた。政府は17日、秋の臨時国会へのIR実施法案提出をにらみ全国での説明会を開始。内外の企業の動きも熱を帯びる。2020年の東京五輪・パラリンピック後の観光の起爆剤として期待が高まるが、ギャンブル依存症への対応など詰めるべき問題は多い。
政府が17日、東京・永田町で開いた初の説明会には約100人が参加。企業の担当者からは「面積規制は厳しくしないで」「地方に優遇措置を」といった声が相次ぐ一方、複数の慎重派は「依存症対策が不十分」「施設周辺の商店街が衰退する」などと表明した。今月末にかけてさらに全国8ブロックで説明会を開き、与党の調整を経て具体的なルールを定める実施法案に議論を反映する。
政府の有識者会議が実施法案の土台として7月末にまとめた報告書は、カジノの事業免許を更新制にし、暴力団などの反社会的勢力の影響を排除することなどを盛り込んだ。日本人にはマイナンバーカードでの本人確認を徹底して入場回数を制限するほか、カジノ施設内でのATM設置やクレジットカード使用を禁止することも求めた。
焦点は入場規制の内容だが、例えば1週間ごとの入場回数の上限や入場料の目安は全くの白紙。与党内では公明党が依存症への懸念からカジノ解禁にもともと慎重だ。遊興で低所得者の生活が一段と困窮する懸念もあり、市場育成と依存症防止の両立が大きな課題だ。
大和総研によるとIR施設を全国3カ所で運営しただけで波及効果は年2兆円に上る。北海道は3つの道内候補地で誘致に成功した場合、それぞれ約1260億~2560億円の効果を見込む。
観光の目玉づくりに悩む自治体には垂ぜんの的で、すでに主な都道府県だけでも大阪府や北海道などが誘致を表明。8月には愛知県も参戦し、ほかにも検討中の自治体は多いもようだ。大阪府は大阪市と共同で30人体制の「IR推進局」を立ち上げる力の入れようだ。
ただ政府は申請主体を都道府県と政令市に限る方向で、全市町村が単独で名乗り出られるわけではない。誘致表明した泉佐野市の千代松大耕市長は「市町村が主体となって申請できるようにしてほしい」と訴える。
事業認定も当初は全国2~3カ所にとどまる見込みだ。和歌山県は区域数を増やすよう政府に要望中だが反応はかんばしくない。仁坂吉伸知事は「残念だなと思う」と認定拡大に期待している。
企業も動く。エイチ・アイ・エス(HIS)子会社のテーマパーク、ハウステンボス(長崎県佐世保市)は園内への誘致を目指し勉強会などを重ねる。セガサミーホールディングス(HD)は4月、日本展開も視野に韓国で同国カジノ大手とIR運営に乗り出した。
米企業の期待も大きく、カジノ大手MGMリゾーツ・インターナショナルは8月に入って日本法人社長に在日米国大使館で要職を務めたジェイソン・ハイランド氏を任命した。ラスベガス・サンズも日本でのカジノ参入を目指している。
(元記事)http://www.nikkei.com/article/DGKKZO20109710Y7A810C1EA1000/